6.長期修繕計画の学び直し?〜あるある問題事例と最近の傾向 [マンション管理士 業務日誌]

2021年05月06日 by 重松マンション管理士事務所所長・マンション管理士 重松秀士


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ところが、同調査の「計画期間25年以上の長期修繕計画に基づき修繕積立金の額を設定している割合」になると、53.6%に低下してしまいます

<画像:【グラフ】25年以上の長期修繕計画に基づき修繕積立金の額を設定している割合>

長期修繕計画がないと、あるいは短期の修繕計画しかないと、例えば管理会社から、

「エレベーターの更新をしたらどうですか。耐用年数の25年を超えていますし、この機種は既に製造中止になっています。また法律で定められた部品の保存期間も終了しています。最近は省エネで地震対策も完ぺきな最新型の機種がありますよ。それに現在の修繕積立金の残高は●●円ありますから、ここで2千万円程度使ってもまだ残りますよ。」

などといわれて工事を実施してしまうことが典型的な事例です。

この話を聞いて「そんなバカな」と思われる方々も少なからずいらっしゃると思いますが、実はこんな事例はいくらでもあるのです。

決して管理会社の提案が悪いといっているわけではありませんが、管理会社にも事情があるのでしょうか、時々びっくりする提案をしてくることがあります。
過去に私がお世話になった管理組合の事例においても、思わず耳を疑いたくなる工事を実施している管理組合が結構ありました。優先順位や今後の資金計画を考えないで、高額な修繕工事を実施しているのです
その典型が、エレベーターの更新、電気幹線の張替え、給水竪管の更新、機械式駐車場の更新等です

これらの工事の中には、いつかは必ず実施しなければならない大切な工事もあります。
ですからやってはいけませんよといっているのではありませんが、優先順位(必要性)と今後の資金計画を考えないで実施してしまうと、その後本当に必要な工事を行わなければならないときになって、資金不足を理由に、管理組合内での合意形成が得られなくなったりします。
そうなるとマンションの資産価値の維持にも影響が出てきます。

2高額な修繕工事の計画が無視されてしまう

<画像:【イラスト】アルミサッシ>代表的な事例は、「アルミサッシュ(共用部分)の更新」です
ご存知の方も多いと思いますが、アルミサッシュの更新には高額な費用(数十万円〜百万円程度)がかかります。耐用年数は35年前後ですが、この工事の実施については、日頃から管理組合で検討をしておく必要があります。

アルミサッシュ更新に関する方針例

  1. 一定の時期に管理組合で全数の更新工事を実施する。
  2. 管理組合で実施するには負担が大きいので、共用部分ではあるが、一定の条件下で個人での実施を認める。
  3. 定期的に部品交換を管理組合で実施し、極力延命を図る。

などがありますが、どの案を採用するかによって工事費用(資金)が大きく変わりますので、本来ならば管理組合で十分に議論を重ねたうえで、その方針をきちんと長期修繕計画に反映させておくべきなのです

しかし、長期修繕計画がないと、そんな面倒くさいことを検討することはできず、結局は議論されないままダラダラと年数だけが経ってしまい、気が付いたときは「●●号室の人は、自分で勝手にやったみたいだ。」とか、「サッシュの動きが重たくなってどうしようもないのだけれど、どうしたらいいの?」などの声が聞こえてくるようになります。
管理組合としてはこのような状態になってから対応しようとしても、適正な対応ができない場合があります。

3修繕積立金の値上ができず、いずれ資金不足に陥る

<画像:【イラスト】修繕積立金が不足して青ざめる人>マンションを適正に維持にするには、管理費にしても修繕積立金にしても、それなりの費用負担を伴います。
無駄遣いをしないで節約することと、必要なお金をきちんと使うことは別に考えなければなりません

戸建て住宅とは違い、合意形成が難しいマンションの場合は、日頃から適正な修繕積立金を徴収する必要があり、更にマンションが直面する事情や社会情勢の変化等に応じてその徴収額は改定(値上げ)していかなければなりません。

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