4.事例:住宅紛争審査会での調停〜裁判まで<マンションに欠陥が見つかったら?> [マンション管理士 業務日誌]

2021年04月08日 by 重松マンション管理士事務所所長・マンション管理士 重松秀士


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築士2名が調停委員として管理組合、売主双方の意見を聞く形で数回実施されました。
売主側の主張をまとめると以下のとおりです。

売主側の主張

  1. タイルの施工に問題があったことは認めるが、売主としての瑕疵担保責任期間の10年は経過しており、タイルの施工不良に対しての損害賠償責任はない
  2. 設計図に記載のある構造スリットに関しては、自社で再検証のうえ、必要と判断したら施工する
  3. 交渉段階で提示した数百万円は、売主としての社会的責任を考慮したうえでの「見舞金」であり、金額の算定根拠はない

品確法による調停は困難。裁判なら「不法行為」か

調停委員としての弁護士の意見も、10年を経過しているので品確法による調停は難しいと思うことや、民法上の「債務不履行」にしても10年の時効を過ぎているため、訴えるのであれば、施工業者を「不法行為」で訴えるしかないのではないかという内容でした

管理組合は、調停を中止したうえで裁判に移行することも検討しましたが、弁護士費用の件や、長期化すれば理事会の負担も大きくなることなどを考え住民アンケートを実施した結果、見舞金の増額を求める形で引き続き調停の場で解決策を模索することにしました。

しかし、最初は「協議してまいりたい」といっていた売主ですが、調停の場においても一向に進展する気配がなく、また、本件以外の諸事情も重なって調停は打ち切りとなりました。

裁判で、売主・施工業者の不法行為責任を追及へ

やむを得ず、最後の手段である訴訟について住民への経過説明会を実施した結果、裁判で追及するべしとの意見が多数だったため、訴訟のための臨時総会を開催。売主や施工業者の不法行為責任に対する「裁判申し立て」が決定し、現在も係争中です。

これまでの経緯をまとめると、以下のようになります。

一連の経緯

  1. 大規模修繕工事を控え、調査を実施。大量のタイルの浮き・剥離や未施工箇所が発覚
  2. 売主に対し「未施工箇所の速やかな施工とタイルの補修費用負担」を求める
  3. 売主から「見舞金」として数百万円の支払意思を含めた回答がある
  4. その後も金額の増額を求めて交渉を重ねたが、のらりくらりの回答に納得がいかず、理事会で住宅紛争審査会への「調停申し立て」を発案
  5. 臨時総会を開催し「調停申し立て」を決定
  6. 住宅紛争審査会による調停を数回実施
    • 調停委員より、品確法による調停は困難との見解が示される
    • 調停委員より、訴えるなら「不法行為」という形しかないのではとの見解が示される
    • また、不法行為の消滅時効も迫っているとの説明を受ける
  7. 期待する結果を得られないまま、調停の打ち切り
  8. 経過説明会の結果、裁判支持の意見が多数だったため、訴訟のための臨時総会を開催。「裁判申し立て」が決定
  9. 裁判を申し立て、現在係争中

4.調停を終えて

今回の調停について、個人的な見解等を交えながら、ポイントをまとめていきます。

住宅紛争審査会への申立ては、施工不良が明らかでも、品確法の適用がある「10年以内」でなければ、期待するような結果は得られない

品確法をご存じの方からすれば「当然だろう」というご指摘があると思います。
もちろん、この点を理解せず調停を申し立てた訳ではありません。

ではなぜ敢えて調停を申し立てたのか−。
第一に、出来ることなら売主としての社会的責任を喚起し、裁判をせずに解決を図りたい意図があったからです。前述の通り、不法行為による訴訟は最初から視野に入っていました。
もちろんそれはこちらの都合であって「10年の壁」を超えられる可能性はゼロです。

第二に、今回のケースでは、「10年の壁を超えられるのでは」というより「何とか超えたい」と強く願う理由がありました。
それは、「住宅性能評価を受けている優良マンション」という触れ込みで販売していた上で発覚した明らかな「施工不良実態」だったから、です。
住宅購入者(管理組合)の立場からすれば、到底容認できることではないことがご理解いただけるのではないでしょうか。

第三に、我々が事前に収集した情報では、今回同様10年を過ぎて発覚した同様の問題(タイルの剥離)に対し、大手デベロッパーが

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