17.マンションの損害(火災)保険について [マンション管理士 業務日誌]

2018年01月24日 by 重松マンション管理士事務所所長・マンション管理士 重松秀士


< ページ移動: 1 2 3 >

具体的な計算例として、マンションが100万戸あった場合、火災事故の発生件数が年間に2,000件で、1件当たりの平均被害金額(支払保険金)が1000万円と想定してみましょう。
保険金総額は、1,000万円×2,000件=200億円となりますので、必要な保険料は200億円÷100万戸=2万円/年間になります。
保険業法で、保険会社が、顧客獲得のために勝手に値引き販売をしたり、過剰な保険金を支払うことが禁止されている理由も「収支相当」でなければならいことにあります。

?給付・反対給付均等の原則(公平の原則又はレクシスの原則)

例えば、木造の戸建住宅と鉄筋コンクリート造のマンションに保険をかけるとします。どちらも評価額は5千万円とした場合、火災が発生するリスクは木造住宅の方が高いことは容易に理解できます。だったら、加入者が支払う保険料は、木造住宅の方がマンションよりも高くなって当然ということです。
専門的にいうと、加入者が負担する保険料は、保険事故が発生する確率と保険金を乗じた額と同じでなければならないという原則です。
マンションでの漏水事故を考えた場合、築浅のマンションと高経年マンションではその発生率が全く違います。最近は、高経年マンションの保険料がとても高くなっているという理由はそこにあります。

?利得禁止の原則

損害保険の場合は一部の例外を除き、その保険で利益を得てはいけないという原則があり、これを「利得禁止の原則」といいます。例えば1億円の保険契約をしていても、損害額が1千万円だったら貰える保険金は1千万円です。わざと事故を起こし、保険金で儲けようとする行為を防止するためです。
損害保険契約をする場合は、十分な補償をしてもらえるように考えて契約することが大事ですが、必要以上の金額で契約をしても、高い保険料を支払うだけになってしまいますので、検討が必要です。

4.マンションに付保する損害保険の代表例

?物保険(基本保証)

一般的には「主契約」といわれ、契約する保険の基本的な部分です。火災保険がベースで、特約としてその他のさまざまな補償がついています。契約金額(保険金額)はマンションの再調達価額 の●●%という方法で決定し、その金額に応じた保険料を負担することになります。鉄筋コンクリート造のマンションの場合は、火災による全損は考えられませんので、100%の契約をする必要はありませんが、30〜60%で契約している管理組合が多いようです。また、マンションでは火災の発生よりも、悪戯や飛来落下物等の外的要因による破汚損の方が圧倒的に多いので、どのような特約を付保するかも検討のポイントになります。水害の可能性がほとんどない高台のマンションに、「水害保証特約」を付けたりしている管理組合を見かけますが、専門家にも相談しながら再検討されたらよいと思います。

?施設賠償責任保険

前述の火災保険は、マンションが被害を受けたときの補償を目的とした保険ですが、施設賠償責任保険は、マンション管理組合が維持・管理する共用施設に原因(管理の不備等)があり、第三者に損害を与えた場合、その損害賠償責任を担保してくれる保険です。
共用部分である給水管からの漏水で、居住者の住戸を水浸しにしてしまったとか、マンション内公園の遊具の管理状況に問題があり、幼児がけがをしたとかなどが代表的な事例で、その場合は管理組合に損害賠償責任が発生しますが、施設賠償責任保険を付保していれば保険でカバーできます。

?個人賠償責任保険

この保険も賠償責任保険ですが、対象は管理組合の共用施設ではなく、マンションの居住者になります。
居住者が、日常生活において、過失等が原因で第三者に対して損害を与えてしまった場合の保険となります。
この保険がカバーしている範囲は結構広く、日常生活に起因する事故等であればマンションの外で発生した場合も適用されます。しかし、近年は高経年マンションを中心に、専有部分の配管が原因での漏水事故が多発しており、そのためにこの保険料が大幅に値上がりしています。
また、そもそも共用部分には関係のない個人の損害賠償責任を、なぜ管理組合が負担して保険をかけなければならないのかという議論もあります。
上下階の漏水事故は、個人間の問題とはいえ、加害者に賠償能力がない場合には、必ずといってよいほど管理組合が紛争に巻き込まれますので、多くの管理組合で付保している場合が多いと思います。しかし、保険料が安い時代ならともかく、最近の大幅な値上がりを考えると、管理組合で付保することの是非も再検討した方が良いかもしれません。

5.その他

地震保険に対する考え方

管理組合で地震保険を付保するべきかそうでないかはよく問題となるところです。

< ページ移動: 1 2 3 >

17/373

次の記事へ >
< 前の記事へ

『 お知らせ&日記(ブログ)』トップに戻る
サイトマップ

マンション管理士 重松秀士の 『マンションサポート・ドットコム』(PC版)
重松マンション管理士事務所(PC版)

重松マンション管理士事務所
〒260-0022 千葉市中央区神明町13-2-104
TEL:043-242-0192/FAX:043-244-9094

Powered by
MT4i 3.0.5

携帯アクセス解析