15.修繕積立金を専有部分の改修に使用した事例の最高裁決定について [マンション管理士 業務日誌]

2018年01月03日 by 重松マンション管理士事務所所長・マンション管理士 重松秀士


< ページ移動: 1 2 3 4 >

建物については、従来の外壁塗装や防水工事に加え、ベランダ手摺の全面交換、玄関扉の更新を計画しました。ちなみに、アルミサッシについては米軍や自衛隊の基地が近くにある関係で、防衛省の騒音対策費でほぼ更新済みでした。
そして、設備に関しては給水管・排水管・ガス管の全面更新を計画しました。

給排水管更新工事等の概要

既設の配管類と更新方法は以下の表のとおりです。

部位現状修繕計画
排水管・配管材料は白ガス管と塩ビ管が混在
・横引管は、下階の天井裏に敷設されている
・竪管・横引管とも硬質塩ビ配管に更新
・なお、横引管は最高裁判例(平成12年3月21日)により「共用部分」
給水管・配管材料は白ガス管
・横引管は、床スラブの上にシンダーコンクリート数?を施工し、その中に埋設
・竪管・横引管とも架橋ポリエチレン管(電気融着継手)に更新
・横引管(専有部分)は、シンダーコンクリート内に埋設(一部露出)
トイレ・従来型便器(フラッシュバルブ方式・専有部分)・給水管、排水管の更新とともに、便器(節水タイプ・専有部分)も交換
浴室・バランス釜タイプ
・浴室防水+押えコンクリート+タイル貼り
・椀トラップを経由して、下階天井裏から排水
・浴室防水、トラップは共用部分
・バランス釜、浴槽、内装タイルは専有部分
・バランス釜と浴槽を撤去してユニットバス化
・ベランダに新規に給湯器(16号)を設置
・床スラブに新たに穴をあけ、下階天井裏に排水経路を確保
・ユニットバスと大型給湯器は専有部分

この表をご覧になって、皆様は何か感じられましたか?
更新工事の内容に、「ユニットバス」「給湯機」「便器」など明らかに専有部分である設備が多く記載されています。前述のとおり、横引管までを更新する例は多いと思いますが、ここまで踏み込んだ形での更新は珍しいと思います。

今回の、工事は共用部分の工事をするためには、浴槽も解体しなければできないとか、トイレの便器も従来品を再利用するなら保証が出ない等の難問が山積していました。
そのため、

  1. 従来のバランス釜タイプの風呂釜と風呂桶は撤去し、復旧しないでユニットバス方式に変更する。
  2. そのためには、給湯器が必要となるのでベランダに給湯機を設置する。
  3. 便器も旧式のフラッシュバルブ方式の便器を再利用するのでは、更新した配管との接続がうまくいかず、工事会社からの保証が出ないので、新品の節水型に交換する。
等の大掛かりな付帯工事が必要と判断しました。
浴室の現状図をご覧ください。
<画像:haikann.png>

この状態で、排水管を更新するには、現在設置してあるバランス釜と浴槽を一旦撤去し、洗い場の床を壊して、排水管と防水層をやり替えた後、また床のコンクリートを打設したうえで、一旦撤去したバランス釜と浴槽を再設置することになります。
検討しましたが、この工法では工期も費用も掛かり、且つ再利用するバランス釜や浴槽も問題なく再利用できる保証がありません。
ユニットバス方式にする方が、工期もコストもメリットがあることが判りました。

費用負担の検討

このように、ユニットバス、給湯器、便器などは明らかに専有部分ですが、この方法で施工する方が、工期も短く費用も安く上がることや、専有部分を個人負担にすると、前述のとおり、経済的な理由等で工事ができない住戸が発生することが明らかなので、全てを修繕積立金で賄い一斉に工事することを検討しました。
長期修繕計画を見直した結果、さすがに一時的に資金ショートすることが分かりましたが、金融機関からの借入れを利用すると何とかなることも分かりました。

< ページ移動: 1 2 3 4 >

15/373

次の記事へ >
< 前の記事へ

『 お知らせ&日記(ブログ)』トップに戻る
サイトマップ

マンション管理士 重松秀士の 『マンションサポート・ドットコム』(PC版)
重松マンション管理士事務所(PC版)

重松マンション管理士事務所
〒260-0022 千葉市中央区神明町13-2-104
TEL:043-242-0192/FAX:043-244-9094

Powered by
MT4i 3.0.5

携帯アクセス解析