2017年01月09日 by 重松マンション管理士事務所所長・マンション管理士 重松秀士
区分所有法では、保存行為(台風で割れたガラスの入替え、汚れた個所の清掃等)は、区分所有者が自由に行うことができますが(法第18条)、標準管理規約では、専用使用部分を除き、保存行為も管理組合が行うことになっています(第21条第1項)。
しかし、マンション管理の専門家でない区分所有者は、第21条を読んでもそのようには理解することができず、行うことができる保存行為の範囲や、勝手に実施した際の費用負担等で管理組合とトラブルになることも多かったと思います。また、管理組合が保存行為を行う際の手続き等も明確ではありませんでした。
今回の改正では、区分所有者が行うことのできる保存行為の範囲と費用負担を明確にし、管理組合が行う保存行為についても理事会決議で行う等の手続きを明確にしました。
また、災害時には理事長の判断で、復旧等の保存行為を実施することができるようにし、
更に、その費用を支出する根拠規定を収支予算の変更(第58条第6項)に規定しました。
なお、管理を行うために必要な範囲内で、理事長が専有部分等に立ち入ることができる規定は従来からありましたが(第23条第1項)、「必要な範囲内」については、明確な規定はなく、時として解釈をめぐり当該区分所有者や占有者とトラブルになることもありました。
今回の改正では新しい条文を追加して、「災害、事故等が発生した場合」であって、「放置した場合は共用部分や他の専有部分に重大な影響を与える場合」には立ち入ることができる規定を明記し、理事長が専有部分に立ち入ることができる範囲をより明確に規定しました。
管理組合が、役員が経営している会社に工事を発注したり、その会社から物品を購入したりすると後でトラブルになることはよくある話です。
会社法では、利益相反取引を行う場合は株主総会や取締役会の承認を得なければできない旨がきちんと定められています。管理組合においても、役員はマンションの資産価値の保全に努めなければならない事はいうまでもなく、個人の利益のために管理組合と取引を行うことは適切ではありません。個人的にはそれ以前の問題として、誤解を与えかねない取引は原則として行わない方が無難であると感じていまが、発注する内容次第では、稀には許される(管理組合の利益になる。)こともあると思います。従来は利益相反取引について明確な規定はありませんでしたが、今回の改正では第37条(役員の誠実義務等)の後に、第37条の2(利益相反取引の防止)を新設し、管理組合と役員の間で利益相反と思える取引をする場合は、事前にその事実を開示したうえで、理事会の承認を得なければならない旨を規定しました。
また、同様の趣旨により理事会の決議を行う際には、その決議に利害関係を有する理事は議決に参加できないこととし(第53条第3項)、更に理事長と管理組合の利益が相反する事項に関しては、監事又は他の理事が管理組合を代表する旨を規定しました(第38条第6項)。
この規定の対象は、「役員」となっていますが、一般の組合員や居住者にも適用することも考えられます。例えば、修繕工事等を組合員や居住者に発注した場合、過去の私の経験では?工事完了後にきちんと報告書を出すように依頼したら、「安くやっているのでそんな手間のかかることまではできない。」といわれ、必要な図書が整備できなかった。?工事の内容に不満があるが、安くやってもらっているので文句をいいにくい。?不完全な工事個所があるので、理事長がやり直すように指示をしたら、反発されてその後の人間関係が悪くなった。?保証期間内に不具合が発生したが、工事をした組合員は既にマンションを譲渡して退去してしまったので責任を取ってもらえなかった等、枚挙にいとまがありません。
「親切な組合員や居住者が、安くやってくれたのでよかった。」という場合もありますが、そうならないことの方が圧倒的に多いので、利害関係者への発注は原則として禁止した方が無難だと思います。
管理組合の役員は、多くの場合輪番制で選出され、役職も「くじ引き」等で決まることが多いことは周知の事実です。
私も多くの管理組合の理事会を拝見していますが、ご主人がお仕事で忙しい場合等は、奥様が代理で出席している例は多く、やむを得ないこととだと感じています。
規約を厳格に適用し、代理出席は認めないとしたら、理事会そのものが成立しない場合もあるからです。
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