32.【コラム】マンション標準管理委託契約書について [法律・財務などのソフト分野]

2003年11月24日 by 重松マンション管理士事務所所長・マンション管理士 重松秀士


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2003年4月に国土交通省から発表された「マンション標準管理委託契約書」について解説しました。

1.はじめに

今年の4月に「マンション標準管理委託契約書」が新しく国土交通省から発表されました。
昭和57年に前身の「中高層共同住宅標準管理委託契約書」ができて以来実に21年ぶりの大改訂です。
今回は「マンション標準管理委託契約書」について簡単に解説いたします。

2.「標準管理委託契約書」とは

ご存知の通りマンションの維持管理はマンション区分所有者で構成する「管理組合」が主体となって行います。
2001年に施行された「マンション管理適正化法」でもそのようにうたってあります。
しかし一般的には管理組合はマンションを管理するための専門的知識やノウハウを持たず、又、区分所有者もマンション管理に専念できない状況にあります。そこでどうしても専門知識を持った管理業者に管理を委託することになり、約9割の管理組合が管理業者に管理を委託していているのが現状です。
ところが管理組合と管理業者の間でトラブルが頻発するようになりました。例えば「きちんとした契約書がない」「委託している業務の範囲が不明確」「委託管理費の明細が不透明」更にひどいのは「管理業者が倒産して多額の積立金を持ち逃げされた」などです。
そこで当時の建設省がトラブルを防止する対策として管理委託契約の雛形として「中高層共同住宅標準管理委託契約書」を作成しました。
法的な拘束力はありませんが役所の指導として長年マンション管理のトラブル防止策として一応の成果を果たしてきました。

3.では、どうして改訂されたか?

一言でいうと、21年前とはマンションを取り巻く環境が大きく変わり、今までの標準管理委託契約書では現実に対して矛盾を生じるようになってきたからです。
つまり、もはや「標準」とは言えなくなってきたからです。

?マンションの持つ社会的地位や使命が大きくなった。→今やマンションの数は420万戸を超え、全国では1割、首都圏では実に5割の人が居住する都市の重要な施設となっている。
?2001年の「マンション管理適正化法」の施行、2002年の「マンション建替え円滑化法」の施行、そして本年の「区分所有法」の改正により、マンションに関する法律が整備されたが「中高層共同住宅標準管理委託契約書」はそれらの法律と整合性が取れない部分が出ている。

4.どの部分がどのように変わったのか(改訂の要点)

ア)自動更新条項が削除された。(第21条関連)

従来は契約終了の○ヶ月前(普通は?〜3ヶ月)までに双方から申し出がない場合は同一条件で自動的に○年間更新するとありましたが今回の改正では削除されています。
これは「マンション管理適正化法」が施行されたことにより業務を受託するには必ず「重要事項説明」を行わなければならないと規定されており、説明を行わなくても自動的に更新される契約自体が「マンション管理適正化法」と矛盾することになります。
そこで自動更新条項を削除し更新したい場合は3ヶ月前に申し入れ、その上で重要事項説明を実施したのち更新すべきとしました。更に双方の協議が整わない時は○ヶ月間の暫定契約を結ぶことができると改訂しました。(一般的には3ヶ月が多いようです。)
当然のことながらこの処置には管理業者の団体が猛烈に反発しましたが国土交通省は断固として修正を拒否し管理組合や区分所有者の保護に力を発揮したといえます。

イ)解約の申し入れが、3ヶ月の猶予期間を設けることで双方から可能になった。(第19条関連)

従来は解約については双方どちらかに債務の不履行や会社の倒産等の事由が生じた場合に認められていました。
又、民法によりいつでも解約は可能ですが、相手に損害が発生した時は損害賠償義務が発生し、過去にも裁判になった例があります。
今回の改訂では事由に関係なく3ヶ月前に申し入れをすると、管理組合からも又は管理業者からも解約が無条件で可能になりました。
これは、管理組合及び管理業者の双方に自由な解約権を認めさせることを目的としています。

ウ)財産の分別管理義務を明確にし、管理費等の収納方法も細かく規定した。(第3条関連)

以前は管理会社が倒産し預けてあった多額の積立金が持ち逃げされたり、銀行に差押さえられたりする大事件が発生しました。(榮高事件 平成8年5月東京地裁など)
当然この後、国土交通省も管理組合と管理業者の財産は明確に分別して管理するよう指導を強化し、「マンション管理適正化法」にも明文化されました。

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