31.【コラム】標準管理規約の改正について [法律・財務などのソフト分野]

2004年02月18日 by 重松マンション管理士事務所所長・マンション管理士 重松秀士


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本年1月に国土交通省から発表された「マンション標準管理規約」について解説いたします。

1.はじめに

本年1月に国土交通省から「マンション標準管理規約」が発表され、都道府県及び政令指定都市等に通知されました。
ご存知のように「管理規約」はマンション管理や運営の憲法ともいえるもので「標準管理規約」は建設省(今の国土交通省)がそのひな形として従来から公表していたものです。
平成9年の改正以来ですが今回は大幅な改正です。大幅改正の理由は第一に
・平成13年の「マンション管理適正化法」の施行
・平成14年の「マンション建替え円滑化法」の施行
・平成15年の「区分所有法」の改正
などによる法整備と適合性を持たせるためで、第二はマンションを取り巻く情勢の変化に対応できるものとするためです。
以下、主要ポイントを簡単に解説いたします。

2.マンションに関する法制度の充実を踏まえた改正

(1)マンション管理適正化法関連

?「マンション」という言葉が法令用語として定着している状況を考え従来の「中高層共同住宅標準管理規約」から「マンション標準管理規約」と名称を変更しました。
?マンション管理に関して専門知識を有するものの活用ができる旨の条文を新設しました。具体的にはマンション管理士その他専門知識を有するものに管理組合の運営等を相談したり、依頼したりできることとなり、更にその費用を管理費から支出できるようになりました。
?適正化法第103条に基づいて宅建業者(分譲業者)はマンションの設計図書を交付する義務が課せられましたので、管理組合の業務に設計図書の管理が加えられました。
?適正化法第76条の財産の分別管理に関して、管理費等の例外的な収納方法が認められていますが、今回の改正ではその部分に踏み込み管理費等の収納方法をその組合の実情にあった形で規約に明示することがコメントに謳われています。

(2) 区分所有法及びマンション建替円滑化法関連

?大規模修繕工事の議決要件を緩和しました。
区分所有法の改正により従来のいわゆる「大規模修繕工事」が区分所有者及び議決権の3/4以上から、普通決議(過半数)によって実施できるようになりました。
しかしここで考えていただきたいことがあります。多くの管理組合の規約では標準管理規約に則り定足数を儲けています。つまり総会の成立要件は区分所有者の半数以上で、さらに議案の可決要件(普通決議の場合)は出席者の過半数で決まりますので、理論的には区分所有者総数のほぼ1/4で「大規模修繕工事」が実施できる場合もあります。ほんとうにそれで良いのでしょうか。
改正の趣旨はマンションにとって当然に必要な大規模修繕工事を円滑に進めるためです。しかし、多額の費用を伴う工事が場合によっては住民の1/4で実施できることに疑問を感じる方も多いと思います。皆様方のマンションで規約を改正される場合は区分所有者の意見を十分に反映させるため検討が必要と思います。その上で、従来どおりの3/4のままでいくか、この際一気に改正するかを判断されたらいいと思います。
私の個人的な意見としては「大規模修繕工事」は区分所有法の原文に基づき「区分所有者及び議決権の過半数で決定する」ほうがいいと思います。

?建替えに関する規定が整備されました。
従来明確な規定が無かった団地の建替えに関しても改正された区分所有法の規定に基づき標準管理規約の中にも各棟建替えや一括建替えについて明文化されました。ここでは建替え規定の詳細は割愛させていただきますが、このことにより区分所有法と標準管理規約の整合性が確保できました。
また、管理組合の業務に「建替えに係る合意形成や各種調査」が加わり管理組合が建替えの検討を実施できるようになりました。そしてそのための費用を修繕積立金の中から支出できることになり建替え問題と管理組合のかかわりが明確になりました。
本来、管理組合の業務はマンションの共用部分等の維持管理であって建替に関しては本来の業務とは言い難い面がありましたが、築30年以上のマンションが今後急増していく現状を考え管理組合がマンションの建替えに関して関与できるほうが現実にあっていると思います。
更に建替え決議が成立し、「マンション建替円滑化法」に基づく建替組合が認可されるまでの間に必要な経費等も一定の範囲内で取り崩すことが可能になりました。

?政府が推進するIT化に備え、電子化に関する規定が整備されました。
改正区分所有法の規定に基づき、規約や議事録の保管が電磁的方法でできるようになりました。具体的には磁気テープ、CD、DVDその他です。この方法で保管する場合は従来の議長及び署名人の署名押印に代えて電子署名(電子署名法第2条)によって作成することが必要です。
また、従来の書面のほかに電磁的方法による議決権の行使ができるようになりました。具体的には電子メールやHPへの書き込みなどです。

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