30.【コラム】管理費等の滞納に対する消滅時効が5年! [法律・財務などのソフト分野]

2004年07月14日 by 重松マンション管理士事務所所長・マンション管理士 重松秀士


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管理費等の滞納に関しては以前にも書きましたが、困っている管理組合がたくさんあります。
それに追い討ちをかけるような判決が確定しましたので私の思いを書きました。

1.はじめに

本年4月に最高裁判決でマンションの管理費等(管理費及び修繕積立金以下同じ)滞納の消滅時効はいわゆる「定期給付債権」にあたるとの判断で5年であるとの判決が出ました。
従来管理費等の滞納の時効は5年説と10年説があり10年説のほうが有利とされていましたのでわれわれ現場で働くものとしては多少安心していましたが今回の決定でがっかりしました。

おそらく最高裁の裁判官はマンションで生活したこともなければましてや役員などやったこともない人ではないかと感じました。今回は自分のマンションやクライアントの依頼で管理等に関する裁判を経験している立場から少々意見を述べさせていただきたいと思います。

2.区分所有法を利用しての債権回収

(1)区分所有法第8条の効力

ご存知のように区分所有法第8条では特定承継人(前の所有者から譲渡を受けた新しい区分所有者)は前区分所有者が滞納していた管理費等を支払わなければならない義務があります。この条文は管理組合にとっては救世主的な存在であることに間違いはありません。時効が成立する5年以内に何らかの方法で新しい区分所有者が決まればその方から回収できますので多くの場合はこの法律を適用して問題が解決します。
しかし、後述するように区分所有者が滞納を続けているにもかかわらずマンションは相変わらずその人の名義のままになっていることがあり、その場合はこの法律では解決しません。

(2)区分所有法第7条の「先取特権」について

この「先取特権」が適用される場合も非常に限られます。裁判所によっては最初から相手にしてもらえない裁判所もあります。
私も何とかこの方法で回収しようと試みましたが、極めて困難です。

?滞納をしている区分所有者が、経済的に問題がなく給与収入や家賃収入を得ていること。
?「先取特権」に基づく差押が他の差押(特に抵当権)と競合していないこと。
などが条件で、実際にこの方法で回収することは不可能に近いです。

3.バカを見る管理組合

マンション管理は個人の所有権だけの問題ではなく管理組合の財産つまり区分所有者全員の共有財産的な面が大きく影響します。またマンションは都市を形成する施設としてその管理状態は都市計画自体にも影響を及ぼします。
そのような視点から考えるとマンションの管理費等は全てのものに優先して法律で保護されるべきだと思います。しかし実際は区分所有法以外の法律の壁に阻まれて最も保護されるべき管理組合がバカを見ているのです。許しがたい事例を下記にご紹介します。

(1)絶対的に優位な抵当権

管理組合が裁判を起こして正当に債務名義を貰い強制執行等の手段に訴えても物件に抵当権が設定されている場合は絶対的に抵当権が優位なので管理組合は打つ手段がありません。債務者がそのマンションから得ている家賃収入を差し押さえようとしても抵当権には劣後しますのでどうしようもありません。
抵当権者も共益費(この場合は管理等も含む)は差し押さえられませんが、家賃の中で共益費が明確になっていなかったり、また明確になったとしてもその分が当然には管理組合に入ってきません。さまざまな手続きや交渉が必要になります。

つまり管理組合は抵当権者のために自分たちの費用を持ち出して抵当物件を一生懸命管理してあげているのです。お人よしとは思いませんか?
また、マンションを競売して回収しようとしても実際には競売後に配当が見込める場合でないと、競売はなかなか実施できません。また、抵当権者の理解も必要ですが、管理費は滞納しているがローンはきちんと払っているようなたちの悪い区分所有者が結構いて競売も不可能に近いのです。

(2)第1抵当権者がいつまでたっても法的手続き(競売)を実施しない場合

抵当権者が抵当権に基づき競売等を実施して、新しい区分所有者がすんなりと決まれば問題も解決します。しかし、債務者が破綻しているにもかかわらずいつまでたっても法的措置を実施してくれない場合があります。
私のマンションでもある区分所有者が3年前から滞納を繰り返しとっくに破綻しているにもかかわらず第1抵当権者の住宅金融公庫はいまだ手を打っておらず所有権もそのままです。法的措置を実施しないこととして考えられる理由は

?この種の事件が多く単に公庫としても忙しく手が回らないだけの理由。
?今の経済情勢の下で法的措置を実施してしまうと大幅な担保割れに陥り損金が多くなるので任意売却も含めて様子を見ている。
?第2抵当権者に何らかの配慮をしていること。
?債務者と何らかの交渉が成立していること。

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