29.【コラム】マンションの長期修繕計画と劣化診断について [建築・設備などのハード分野]

2005年08月12日 by 重松マンション管理士事務所所長・マンション管理士 重松秀士


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良好なマンションストックの増加と、既存マンションの市場における適正な評価を目的として、今年の秋から「マンション履歴システム」が国の施策として開始されます。
ご存知のとおり、マンションの適正な維持管理を実施するには、適正な長期修繕計画書の作成が欠かせません。
そして、その長期修繕計画書に基づいて計画的な修繕と資金計画を実施していく必要があります。

 ところが最も大切なその「長期修繕計画書」が結構おざなりに作成されて、あまり活用されていない場合が多いのです。
今回は、マンションにとって重要な「長期修繕計画書」の作成と「建物劣化診断」の実施についてお話致します。

1.マンションの長期修繕計画書とは?

 マンションの共用部分、つまりコンクリートの躯体や外壁の塗装それにいろいろな設備は、建設されたときはもちろん新品ですが、その状態を永久に維持していくことはできません。 どんなものでも必ず老朽化してきますので、ある時期を見て適正な修繕や交換を実施して管理していくことが必要になります。 では、いつどのような修繕工事を実施すればいいのでしょうか?

 いくつかのパターンがあります。
「管理会社にいわれたから…」、「もう10年たったから…」、「汚くなったから…」、「居住者から苦情が出たから…」これらの話を良く聞きます。
間違いではありませんが、きちんとした理由ではありません。
答えは漠然としていますが、「必要な時期に、適正な修繕を実施する。」です。
そして、25年〜30年間において、いつ、どのような修繕を、いくらかけて実施するかを記載したスケジュール表が「長期修繕計画書」です。

 一般的には横長の表になって、修繕工事の支出金額と修繕積立金の収支関係が一緒に記載されている例が多いと思います。
また、数字が並んだ表だけではなんとなく分かりにくいので、グラフ化した別紙とセットになっているのが普通です。


2.適正な長期修繕計画書の作成ポイントは?

 マンションにとって必要な修繕工事は大体決まっています。そしてその工事が必要になる周期も標準的なものが決まっています。
例えば屋上の防水工事は12年周期で実施するとか、鉄部のペンキの塗りなおしは5〜6年周期とかです。

 しかし、それはあくまで標準的な場合であり、マンションによっては必ずしも同一ではありません。
海の近くのマンションはサビが発生するのが早いとか、水道水の水質がよくないので給水管の傷みが早いとか、テレビの共同視聴設備はまだ交換する必要がないのだけれども地上波デジタルに対応するためにいやでも工事を実施する必要があるなどです。

 また、修繕とは基本的にマンションを購入したときの状態にできるだけ戻す(近づける)ことですが、社会的な生活水準の向上や居住者の要求によりレベルアップ(グレードアップ)をする必要に迫られることもあります。
ですから、通り一遍の計画書ではなくそのマンションの実態や、居住者の要求にあった長期修繕計画を作成する必要があるのです。
また、マンションが積み立てるべき修繕積立金の妥当性も検討しなければなりません。
つまり、現在の積立金の額で将来も大丈夫なのか、いつかは値上げしなければいけないのか、それともある時期に一時金として多額のお金を徴収しなければいけないのかなども同時に検討します。

3.ではどうやって作成すればいいの?

 マンションの実態を正確に把握するには「建物劣化診断」を実施することが大切です。 人間でいえば「人間ドック」のようなものです。現在の自分の健康状態を正しく認識して、今後のライフスタイルを決定することと良く似ています。 コンクリートの状態、外壁の塗装やタイルの状態、屋上防水の状態、給排水設備の状態等を、保存してある図面や書類、専門家による目視、機器を使用した診断等を利用して正確に把握します。 そして、その判定結果を基に今後必要な修繕工事の種類と仕様、実施時期を決定し、向こう25年〜30年を見据えて長期修繕計画書を作成します。 ですからこの作業は大変で専門家を活用することになりますし当然に費用もかかります。

 よく、「無料でやってあげますよ。」という会社があります。1社は管理会社そしてもう1社は修繕専門会社です。
しかし、私の考えからするとそのような診断はあまり感心しません。
なぜなら、管理会社が無料で実施してくれる作業は主にコンピューターソフトを利用し、築年数や住戸数など必要な項目をインプットすれば簡単にできる物で「概算法」といわれます。

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