16.【コラム】管理会社による「新管理者管理」を考える。 [法律・財務などのソフト分野]

2007年04月13日 by 重松マンション管理士事務所所長・マンション管理士 重松秀士


日本経済新聞の第1面に掲載されたこともあり、管理会社による「新管理者管理」についての議論が、マンション管理の世界で活発になっています。
このシステムは、マンションの管理会社が区分所有法第25条に規定する「管理者」に就任して、その権限を強化したうえで責任をもってマンション管理に当たるというものです。
従来は、区分所有者を主体とした理事会を構成し、その中から理事長(管理者)を選任して、理事長がマンション管理を遂行するシステムです。
理事長が、区分所有者から管理会社に代わっただけですが、そこにはとても大きな違いがあります。
従来の区分所有者による理事長は、一般的に管理規約でその権限が大幅に制限されて、業務の多くは「理事会の決議を経て」実施することになります。それは、専門的知識が乏しい理事長の負担を軽くするため理事会によるトロイカ方式のほうがうまく行くと考えられているからです。
一方、管理会社による理事長は、理事会の決議を必要とせず「管理の専門家」として強大な権限に基づき管理を遂行します。(もちろん管理組合に対する報告はきちんと実施します。)

ここで重要なのは、管理組合(区分所有者)と管理会社の信頼関係です。
自分達の財産を自分達以外の人に管理してもらうわけですから信頼関係が成立していることが大前提です。
管理会社は管理組合の内部事情を全て把握していますので、当然修繕積立金の残高も分かっています。多額の修繕積立金を無駄に使わずに有効に活用して管理や修繕を実施してもらわないといけません。一歩間違うと「ネコに鰹節の番をさせる」様な結果にもなりかねません。

この記事以降、マンション管理士会や管理組合団体等は、このシステムに反対し、検討を開始した国交省に対して「意見書」を提出して苦言を呈しています。その最大の趣旨は、マンション管理の自主性を謳った「マンション管理適正化法」の精神に反するというものでした。

しかし、冷静に考えてみませんか?
マンションはいわゆるファミリー型のマンションだけではありません。
区分所有者が居住しない「リゾートマンション」や「投資用ワンルームマンション」なども多数存在します。
それらのマンションが、区分所有者の不在や無関心によりきちんと管理されずに放置されたら資産価値の低下どころか、都市計画やまちづくりにも大きな影響が出てきます。
また、ファミリー型マンションであっても最近は区分所有者の高齢化により理事の成り手が少なくなり、自主性を持って管理するのが大変になっているマンションも多くなっています。
こんなときに、信頼のおける管理会社に理事長になってもらいマンション管理のプロとして管理を依頼できるならば区分所有者も負担が軽くなり安心して資産管理ができる場合があります。

「新管理者管理」を整理すると

  • このシステムを採用するには管理会社と管理組合の信頼関係構築が大前提
  • 専門家に依頼するので、管理組合(区分所有者)の負担は軽減される
  • 当然のことながら、管理コストは割高となる
  • 最終的には、管理会社の業務執行状況を第三者的な立場の者が検証するシステムが必要
    といえると思います。

    私個人の考えとしては、マンション管理士会のようにヒステリックに「新管理者管理」を否定するつもりはありません。
    管理組合が、その内容を十分検討し、必要に応じて活用すればいいと思います。

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