72.管理費等の滞納区分所有者に対する法的措置 [マンション管理士奮闘記(事例紹介)]

2005年01月22日 by 重松マンション管理士事務所所長・マンション管理士 重松秀士


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事例紹介

1.はじめに

この問題は守秘義務や場合によっては特定の人物の名誉等に関わるデリケートな問題を含んでいます。よって事例に関してはノンフィクションではありますが一部仮名を使用しています。

2.滞納の増加

平成15年に実施された国土交通省の「マンション総合調査」では全く滞納がないという管理組合が前回の調査よりも大幅に増えています。しかしこの数字だけを見てマンションの滞納問題が減少しているとはとても考えられません。そもそもこのマンション総合調査は2500の管理組合にアンケートを実施して回答してきた組合は1000組合ちょっと。全国にあるマンション管理組合の数は6万〜7万とも言われています。 とても全国全てのマンションを代表しているとは思えません。 しかもマンション総合調査に回答をよせる管理組合は管理に対する意識が極めて高い管理組合で普段から滞納に関しては真剣に対応しています。 しかし、実際問題としては、私のところに来る相談でも最近は滞納に関する相談は極めて多いのです。

3.どうして滞納問題が発生するか?

当然のことながら社会情勢や経済情勢の悪化で経済的に困窮した区分所有者が管理費等を払えなくなってきます。ここでは個々の区分所有者が滞納に至る経緯や理由に関しては申し上げません。その代わりに何故、滞納が発生しているのに管理組合が適切な対応をとらないかと言う理由を考えてみました。

ア)無関心がゆえに情報の入手が遅れてしまう。

 自主管理の管理組合を除いて多くの場合は管理業者を起用して日常管理をこなしています。ところが管理業者の中には毎月きちんと月次報告を管理組合(理事会)に行なっていない業者も結構あります。又、月次報告書を提出していても管理費等の収納状況や滞納者リストを添付していない場合や「未収金」と簡単に記入して書類のみを提出するのでまさか「滞納」が発生していると分からないこともあります。  しっかりした管理業者が提出した月次報告書を理事会がきちんとチェックしていれば早期に滞納を発見できますが、普段から無関心だと総会資料を作成する時に初めて分ったなどということはざらです。 私が知っているある管理組合では2年以上も経って始めて問題になったりしています。

イ)滞納が発生しても「他人事」だと思ってしまう。

 これも結構多いパターンです。 「自分はきちんと払っているから…」との判断ですが、滞納が増えれば最終的にはそのツケはきちんと支払っているまじめな区分所有者に回ってくることをあまり考えないようです。 日常管理の費用や、修繕工事の費用などを滞納者に代わって立て替えてあげているようなものです。

ウ)適切な対応策が分らない。

 「滞納は問題である、だから何とかしないと…」とは分っているのですが、ではどうやって対応したらよいのかいい考えが浮かびません。 管理業者はもともと自分のお金ではないから相談してものらりくらり、「滞納者の方にもいろいろ事情がありまして…、しかもプライバシーの問題も…」などとどちらの味方か分からないようなことを言い出します。弁護士さんに依頼しようにも回収するのに弁護士費用のほうが高く付きそうだし、かといって自分が直接「滞納者」とかけあって交渉したり、回収したりするのはいやだし… というわけで時間ばかりが経ってしまい気が付いた時はすぐに数十万円になっています。

4.事例・滞納者に対する「少額訴訟大作戦」

実際に私が体験した滞納者への裁判をお話できる範囲でお話いたします。
概   要
規   模   神奈川県内の100戸以下のワンルームマンション
滞 納 額    約30万円(遅延損害金含む)
滞 納 者    非居住区分所有者(仮名で小柳さん)
私の立場     外部理事長

(1)まずは簡易裁判所への相談

 最初に考えたのはどの方式で裁判を実施するかです。
「普通訴訟」か「支払い督促」か「少額訴訟」か、それぞれ特徴があり、「金額」、「相手の居住地」、「証拠」、「相手の状況(職業)」などいろいろな条件を考えて選択する必要があります。詳しいことは省略いたしますが私は過去の経験から今回は訴額が60万円以下だったので少額訴訟を選択することにしました。相談した簡易裁判所の書記官もそれがいいのではないかと言ってくれました。
皆様は意外に感じられるかもしれませんが簡易裁判所の書記官は概ねどの裁判所でもかなり親切に教えてくれます。

(2)いよいよ訴状の提出

 訴状に関しての書き方は特に制限はありませんが、以前千葉市で実施した時のフォームを参考にして記入しました。
慣れていたつもりですが、それでも数点の指摘を受け訂正したあとようやく提出して受理されました。

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