2016年12月26日 by 重松マンション管理士事務所所長・マンション管理士 重松秀士
談合は、日本の建設業界特有のことだと昔からいわれてきましたが、最近は大手のゼネコンを中心に「脱談合」宣言をするようになってきました。しかし、実際は脱談合宣言が業界全体に行きわたっているわけでもなく、マンションの大規模修繕工事を専門とする業者間においては、全く改善は見られず、多くの管理組合が被害にあっている状況です。そしてもっとひどいのは、管理組合の多くは、自分たちが被害にあったことを分かっていないことです。
これが、大規模修繕工事における談合の実態です。
では、なぜ談合が起こるかを考えてみましょう。そこには、管理組合側の問題点もあるようです。
談合が起こりやすい理由の一つに、管理組合の組織と運営方法があります。下の表をご覧ください。管理組合と民間の会社の一般的な比較をしてみました。
管理組合 | 民間の会社 | |
---|---|---|
?構成員 | 管理組合員 | 株主 |
?最高意思決定機関 | 管理組合総会 | 株主総会 |
?業務執行・基本意思決定 | 理事会 | 取締役会 |
?役員選出方法等 | 輪番制・義務的・任期1年 | 特定の人物・複数年任期 |
?役員の能力 | ほとんどが素人 | プロの集団で実力者揃い |
?責任体制 | 不明確 | 明確(刑事罰あり) |
?報酬 | 無報酬 | 高額報酬 |
組織の形態を見ると、?から?まではよく似ています。しかし、運営に関する?から?までは全く異なります。
つまり、良いか悪いかは別にして、多くの管理組合の運営は、?輪番制(順番)で選ばれた役員が、?いやいやながら苦手なことを、?責任体制が不明確なまま、?無報酬でやらされている、ということです。
ですから大規模修繕工事のような大きな事業を担当することになった理事や専門委員は、?なるべく面倒なことはやらず、?責任がこの身に降りかからないように発言し、?組合員からも文句をいわれないように行動して、?早く終わらせて辞めたい、が本音です。その結果、次のようなことを考えます。
以上のような選択肢は決して間違っていないのですが、自分たちの頭できちんと考えずに、あまりにも形式にこだわりすぎるため、手順(手続)や見積金額だけで設計事務所や工事業者を選んでしまいます。ここに談合が入り込むすきができてしまいます。
談合といえば、工事業者間で話し合ってインチキな見積書を提出する工事業者が一番悪いと思いがちですが、実はそうではありません。
「本当の悪」は、裏で談合を取り仕切っている設計事務所や管理会社なのです。本来、彼らは信頼関係を基盤とする民法上の委任(準委任)契約に基づき、管理組合のために業務を行わなければならない立場にあります。しかし、実態は、管理組合が気付かないことをいいことに、信頼を裏切る行為を繰り返し、多額のキックバックをかすめ取っています。
建設業界特有の事情といってしまえばそれまでですが、あまりにもあこぎなやり方だと思います。また、談合が常態化しているこの業界では、やっている関係者らも自分たちは悪いことをやっているとは考えず、「会社の利益のためにはやむを得ない。」程度にしか考えていません。つまりお金をいただいている管理組合の利益のためではなく、自分たちの利益ために一生懸命になっているということです。
設計事務所や管理会社は管理組合の予算額等をすべて知っているわけですから、そのような関係者が工事業者と結託して裏切り行為を行うと、管理組合はたまったものではありません。
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