3.新築マンションで施工不良!外壁タイルの訴訟事例とポイント<マンションに欠陥が見つかったら?> [マンション管理士 業務日誌]

2023年04月18日 by 重松マンション管理士事務所所長・マンション管理士 重松秀士


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12年目の大規模修繕工事なら、0.2×12年=2.4%になる計算で、この程度であれば正常な範囲といった見方になります。

この数値は、建築家の鈴木哲夫氏が「防水ジャーナル」で発表された、施工不良がない建物においては1年で0.19%という数字を参考にしたものです。

(参考2)浮き等の施工不良の目安は、施工後10年超15年以内なら5%以上

<画像:>もう一つの参考指標は、大阪地方裁判所判事である高嶋卓氏が判例タイムズに寄せた論文で示された数字(下表参照)で、本記事の基になっている事例であれば「施工後10年超15年以内」に該当するので、「5%以上」なら施工不良の可能性が高い、という見方になります。

この数値は、先の鈴木哲夫氏による記事に記載されている「施工不良のあった建物については0.46%/年(12年なら0.46%×12年=5.52%)」という数字に近いものでもあります。

なお、本記事の基になっている事例の不具合率は15%超でしたので、これら参考指標を大きく超える数値であることをご理解いただけると思います

施工後の期間 浮き・剥落の割合
5年以内 0%以上
5年超10年以内 3%以上
10年超15年以内 5%以上
15年超20年以内 10%以上

出典:判例タイムズ

3幾度かの交渉を重ねた後、損害賠償請求訴訟へ

当初から訴訟を視野に入れていたものの、弁護士費用や時間がかかること、理事(特に理事長)の負担も大きくなること等から、まずは直接交渉(当事者同士の話し合い)を行うのが一般的です。

本記事の基になっている事例においても同様で、まずは直接交渉を行いましたが、残念ながら期待する「誠意ある回答」は得られませんでした。

「経年劣化」と「時効」を主張してくる

<画像:>他の事例においてもそうですが、10年を過ぎて施工不良が発覚した場合、大抵は「経年劣化」と「時効」を主張してきます
一部そうではない事例もありますが、残念ながら「はい、施工不良でした。費用負担いたします。」とはいきません・・・。

次の手段として「住宅紛争審査会」や「民事調停」の活用が考えられますが、経験上、同じ主張を展開してくるので、訴訟同様の成果を得るのは極めて難しいと思います。
しかし、それぞれ低コストで済み、公平中立な場で第三者を交えてやりとりできるため、「直接交渉で全く相手にしてもらえない」「もう少しだけ譲歩してくれればいい」等の場合も含めて、うまく活用できる場面はあると思います。

損害賠償請求権の「消滅時効」と「立証責任」に注意

従って、10年を過ぎて施工不良が発覚した場合、最初から訴訟を視野に入れて行動することが肝要だと思います。
そして、訴訟を視野に入れる場合、注意しなければならないのは以下2点です。

  1. 「消滅時効」があること
  2. 施工不良の「立証責任」は管理組合にあること

被害者等が損害及び加害者を知った時(今回であれば、施工不良と確信する事実を知った時)から「3年」、権利を行使しないと時効になってしまいます。(事実を知ることなく20年経った場合も時効になります)
従って、その点を十分に意識して行動することが、極めて重要なポイントです

<画像:>また、施工不良であることを、管理組合が証明しなければなりません

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